第0章:はじめに
エクセルのファイル消失は、誤操作やシステムエラー、ハードウェアの問題など、さまざまな要因で発生します。
しかし、多くの場合、適切な方法を用いればファイルを復元することが可能です。本ガイドでは、エクセルの復元に関するあらゆる手法を網羅し、データを取り戻すための具体的な手順を提供します。
- 第0章:はじめに
- 第1章:エクセルファイルが消える主な原因
- 第2章:自動保存機能と復元方法
- 第3章:保存し忘れたファイルの復元
- 第4章:削除・上書きされたエクセルファイルの復元
- 第5章:エクセルの一時ファイルを利用した復元
- 第6章:クラウドストレージを活用した復元
- 第7章:データ復旧ソフトを活用する方法
- 第8章:エクセルのバージョン別の復元方法
- 第9章:トラブルシューティングと復旧のための予防策
- 第10章:まとめ
第1章:エクセルファイルが消える主な原因
エクセルファイルの消失は、多くのユーザーにとって非常に困る問題です。重要なデータが失われると、業務に支障をきたすだけでなく、場合によってはプロジェクト全体に影響を与える可能性があります。
この章では、エクセルファイルが消えてしまう主な原因について詳しく解説し、どのようなシナリオでデータが失われるのかを明確にします。
人為的ミスによるファイル消失
誤って上書き保存してしまった
エクセルファイルを誤って上書き保存することは、よくあるミスの一つです。例えば、
-
元のファイルを編集し、そのまま保存してしまった。
-
別の名前で保存するつもりが、同じファイル名で保存してしまった。
-
重要なデータを削除した後に、意図せず上書き保存してしまった。
このような場合、元のデータを取り戻すには「バージョン履歴」や「以前のバージョン」を活用する方法が有効です。
間違えて削除してしまった
ファイルを誤って削除することも、非常によくある問題です。
-
デスクトップやフォルダ整理中に、必要なエクセルファイルを削除。
-
「Shift + Delete」で完全削除してしまい、ごみ箱にも残らない。
-
クラウドストレージの設定ミスで、同期されたデータが削除される。
このような場合、まずは「ごみ箱」や「クラウドのゴミ箱」から復元を試みることが重要です。
保存し忘れて閉じてしまった
エクセルファイルを作業中に、誤って保存せずに閉じてしまうケースも多く見られます。
-
忙しい作業の最中に、間違えてウィンドウを閉じてしまった。
-
PCのフリーズやクラッシュによって、意図せずエクセルが終了した。
-
保存の確認メッセージを誤って「いいえ」と選択してしまった。
こうした場合、エクセルの「未保存のブックの回復」機能を利用することで、一定のデータを取り戻せる可能性があります。
複数のバージョンの管理ミス
エクセルファイルをチームで共有している場合、
-
誰かが古いバージョンを上書きしてしまう。
-
複数人が同時に編集し、データの競合が発生する。
-
どのファイルが最新か分からなくなり、誤って古いデータを使ってしまう。
こうした問題を防ぐためには、
-
クラウドストレージ(OneDriveやGoogle Drive)のバージョン管理機能を活用。
-
変更履歴を確認しながら作業を進める。
-
定期的にバックアップを取る。
などの対策が重要です。
ソフトウェアの問題
エクセルのクラッシュやフリーズ
エクセルがクラッシュすると、作業中のファイルが失われることがあります。
-
複雑な計算式や大量のデータ処理が原因でクラッシュ。
-
エクセルのメモリ使用量が増大し、動作が不安定になる。
-
アドインやマクロが原因で、エクセルが強制終了する。
クラッシュ後にファイルを復元するためには、エクセルの「自動回復」機能を利用するのが基本です。
Windowsの強制終了やブルースクリーン
-
突然の電源断や、Windowsの強制終了によるファイル損失。
-
ブルースクリーンエラーが発生し、エクセルが異常終了。
-
Windowsアップデート中に強制再起動され、作業中のファイルが閉じられる。
このような状況では、一時ファイルや自動回復データが残っている可能性があるため、それらを探すことが有効です。
エクセルのバージョンによる影響
-
古いエクセルバージョンでは、新しいバージョンのファイルを適切に開けない場合がある。
-
ファイルのフォーマット変換時に、データが欠損するリスク。
-
Excelの更新による設定変更で、従来の保存方法が使えなくなる。
定期的にソフトウェアを最新バージョンに更新し、バックアップを取ることが重要です。
ハードウェア・外部要因
突然の停電
-
電源が切れて作業中のファイルが消失する。
-
停電後にPCが正常に起動しなくなる。
-
データが破損し、ファイルが開けなくなる。
UPS(無停電電源装置)の導入や、クラウドへの自動バックアップを設定することでリスクを軽減できます。
ストレージデバイスの故障
-
SSDやHDDが故障し、データが読み込めなくなる。
-
USBメモリや外付けHDDの接触不良でファイルが開けない。
-
ストレージの経年劣化によるデータ損失。
定期的なデータのバックアップと、エラーチェックの実施が推奨されます。
ウイルス・マルウェアの影響
-
ランサムウェアによってエクセルファイルが暗号化される。
-
マルウェアによるデータ破壊。
-
不正アクセスによるファイルの改ざんや削除。
セキュリティソフトを導入し、怪しいファイルを開かないことが重要です。
第2章:自動保存機能と復元方法
エクセルには「自動保存(AutoSave)」と「自動回復(AutoRecover)」の機能があります。これらを適切に活用することで、ファイルの消失リスクを最小限に抑えることができます。
エクセルの自動保存機能とは?
自動保存(AutoSave)とは?
自動保存(AutoSave)は、ExcelのOffice 365バージョンやOneDriveとの連携時に有効な機能であり、作業内容がリアルタイムでクラウド上に保存されるため、データ消失のリスクを最小限に抑えることができます。
-
リアルタイム保存:作業内容が自動的にクラウド上に反映される。
-
他のユーザーとの共同編集がスムーズ:共同作業中でもデータの同期が簡単。
-
保存ミスを防止:手動で保存する手間を省く。
ただし、自動保存機能はローカル環境では有効にならず、OneDriveやSharePointとの同期が必須となります。
自動回復(AutoRecover)とは?
自動回復(AutoRecover)は、エクセルがクラッシュした場合や異常終了した際に、最後の状態を復元するために役立つ機能です。
-
一定間隔ごとにデータを自動保存:デフォルトでは10分ごとに回復用のバックアップを作成。
-
エクセルの再起動時に復旧可能:「回復済みファイル」オプションが表示される。
-
意図せぬ終了からのデータ保護:保存を忘れて閉じた場合にも復元できる可能性がある。
この機能は特にローカル環境での作業時に重要であり、設定を適切に管理することで、ファイルの消失リスクを低減できます。
自動保存されたファイルの復元手順
「回復済みファイル」からの復元
エクセルが異常終了した場合、再起動時に「回復済みファイル」ウィンドウが表示されることがあります。これを活用すれば、作業中のデータを取り戻せる可能性があります。
手順
-
Excelを再起動する。
-
「ドキュメントの回復」ウィンドウが表示される。
-
一覧に表示されたファイルの中から、最新のものを選択。
-
ファイルを開いた後、「名前を付けて保存」を実行。
この手順により、保存し忘れたファイルでも一定の範囲で復旧が可能です。
Excelの「管理」タブから復元する方法
エクセルの「管理」オプションを活用すれば、手動で自動回復ファイルを探すことができます。
手順
-
Excelを開き、「ファイル」→「情報」をクリック。
-
「ブックの管理」を選択し、「保存されていないブックの回復」をクリック。
-
未保存のファイルがリスト表示されるため、適切なものを開く。
-
「名前を付けて保存」を実行し、元のデータを保持。
この方法は、自動回復ウィンドウが表示されなかった場合にも有効です。
Windowsのエクスプローラーを使って復元する方法
Excelの自動回復データは、特定のフォルダに保存されています。このフォルダにアクセスすることで、回復データを手動で探すことができます。
手順
-
エクスプローラーを開き、次のパスを入力:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles
-
「.asd」または「.xlsb」ファイルを探す。
-
Excelでファイルを開き、「名前を付けて保存」を実行。
このフォルダ内に自動回復データが存在する場合、手動で開いて復旧することが可能です。
自動保存が有効になっていない場合の対処法
AutoSaveの設定方法
エクセルの自動保存機能(AutoSave)が有効になっていない場合、以下の手順で設定を確認・変更することができます。
手順
-
Excelを開き、「ファイル」→「オプション」を選択。
-
「保存」のタブを開く。
-
「自動回復を有効にする」と「AutoSaveを既定でオンにする」のチェックを確認。
-
必要に応じて「自動回復の保存間隔」を短縮(デフォルトは10分)。
-
設定を保存し、Excelを再起動。
この設定を適用することで、自動保存機能を最大限に活用できます。
定期的に手動でバックアップを取る方法
自動保存に頼らず、手動で定期的にバックアップを取ることも重要です。
推奨されるバックアップ方法
-
「名前を付けて保存」を活用し、異なるバージョンを保存。
-
OneDriveやGoogle Driveの「バージョン履歴」機能を活用。
-
USBメモリや外付けHDDへの定期的なバックアップ。
-
クラウドストレージを併用し、ファイルの同期を確実に行う。
バージョン履歴機能を活用する
クラウドストレージ(OneDrive、Google Drive)を利用している場合、「バージョン履歴」を活用することで、誤って上書きしたデータも元に戻すことができます。
OneDriveでの手順
-
OneDriveのウェブサイトにアクセス。
-
復元したいファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」を選択。
-
過去のバージョンをプレビューし、適切なものを復元。
この方法により、過去の編集履歴を活用してファイルを復旧できます。
第3章:保存し忘れたファイルの復元
エクセルを使用していると、ファイルを保存し忘れたまま閉じてしまうことがあります。特に、大量のデータを入力した後に保存を忘れると、大きな損失につながる可能性があります。
しかし、エクセルには「未保存のブックの回復」機能があり、一定条件下ではデータを復元することが可能です。本章では、保存し忘れたエクセルファイルを復元する方法について詳しく解説します。
エクセルを閉じてしまった場合の対処法
「未保存のブックの回復」機能を活用する
エクセルには「未保存のブックの回復」という機能が備わっており、保存されていない作業ファイルを一時フォルダから復元することができます。
手順
-
Excelを開く。
-
「ファイル」→「情報」をクリック。
-
「ブックの管理」を選択し、「保存されていないブックの回復」をクリック。
-
表示されたリストから、復元したいファイルを開く。
-
「名前を付けて保存」を実行し、ファイルを確実に保存する。
この方法は、エクセルが突然閉じてしまった場合に有効です。ただし、エクセルの設定によっては回復用ファイルが残らない場合もあります。
一時ファイルを探して復元する
エクセルが異常終了した場合、一時ファイル(.tmp、.asd など)が保存されていることがあります。これを探して復元することで、作業内容を取り戻せる可能性があります。
手順
-
エクスプローラーを開き、以下のフォルダにアクセス:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles
-
「.asd」または「.tmp」ファイルを探す。
-
エクセルでファイルを開き、「名前を付けて保存」を実行。
この方法により、エクセルがクラッシュした際のデータを取り戻せる場合があります。
エクセルがフリーズ・クラッシュした場合
「ドキュメントの回復」画面を利用する
エクセルがフリーズやクラッシュした際に、再起動時に「ドキュメントの回復」画面が表示されることがあります。この画面を利用すれば、未保存のデータを復元できる可能性があります。
手順
-
Excelを再起動する。
-
「ドキュメントの回復」ウィンドウが表示される。
-
一覧に表示されたファイルの中から、最新のものを選択。
-
ファイルを開き、「名前を付けて保存」を実行。
この方法を試しても復元できない場合は、一時ファイルを手動で探す必要があります。
Windowsの「一時ファイル」を探す
Windowsの一時ファイルフォルダには、エクセルの作業ファイルが一時的に保存されていることがあります。
手順
-
Windowsキー + R を押し、「%temp%」と入力しEnterを押す。
-
一時ファイルフォルダ内で「.xls」または「.asd」ファイルを検索。
-
見つかったファイルをエクセルで開き、「名前を付けて保存」を実行。
この方法は、手動でデータを探す必要がありますが、高確率で復元できる可能性があります。
第4章:削除・上書きされたエクセルファイルの復元
エクセルファイルを誤って削除してしまったり、間違えて上書きしてしまうことはよくあります。しかし、適切な方法を使えば、多くの場合ファイルを復元することができます。
本章では、削除や上書きされたエクセルファイルを取り戻すための具体的な手順を詳しく解説します。
ごみ箱から復元する方法
Windowsのごみ箱をチェックする
Windowsでは、通常削除されたファイルは「ごみ箱」に移動されるため、簡単に復元可能です。
手順
-
デスクトップの「ごみ箱」を開く。
-
削除されたエクセルファイルを探す。
-
ファイルを右クリックし、「元に戻す」を選択。
この方法でファイルが元の場所に復元されます。
OneDriveやGoogle Driveの「ゴミ箱」からの復元
クラウドストレージを利用している場合、クラウドの「ゴミ箱」からファイルを復元することも可能です。
OneDriveの復元手順
-
OneDriveのウェブサイトにアクセス。
-
「ゴミ箱」を開く。
-
削除されたファイルを探し、「復元」をクリック。
Google Driveの復元手順
-
Google Driveにアクセス。
-
「ゴミ箱」を開く。
-
復元したいファイルを右クリックし、「復元」を選択。
「以前のバージョン」機能で復元
Windowsには「以前のバージョンの復元」機能があり、過去の状態に戻すことが可能。
Windowsの「ファイル履歴」を活用する
手順
-
削除または上書きされたエクセルファイルがあったフォルダを開く。
-
フォルダ内の空白部分を右クリックし、「以前のバージョンの復元」を選択。
-
復元したいバージョンを選び、「復元」をクリック。
OneDriveの「バージョン履歴」から復元
OneDriveでは、過去のバージョンのファイルを確認して復元できます。
手順
-
OneDriveのウェブサイトにアクセス。
-
復元したいエクセルファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」を選択し、復元したいバージョンを開く。
-
「復元」をクリックして、古いデータに戻す。
Macの「Time Machine」を利用する
MacユーザーはTime Machineを利用することで、過去のファイルを復元できます。
手順
-
Time Machineを開く。
-
該当のフォルダを選択。
-
過去のバックアップから復元したいバージョンを探す。
-
「復元」ボタンをクリック。
上書きされたファイルの復元
Excelの「バージョン履歴」を利用する
Excelには「バージョン履歴」機能があり、過去の状態に戻せることがあります。
手順
-
Excelを開き、「ファイル」→「情報」をクリック。
-
「ブックの管理」の中にある「以前のバージョン」を選択。
-
復元したいバージョンを開き、「復元」をクリック。
クラウドストレージの履歴を活用
Google DriveやDropboxなどのクラウドサービスには、ファイルのバージョン履歴が保存されているため、過去の状態に戻すことができます。
Google Driveの手順
-
Google Driveを開く。
-
該当のエクセルファイルを右クリックし、「バージョン履歴」を選択。
-
復元したいバージョンを開き、「復元」をクリック。
Windowsの「シャドウコピー」機能を使う
Windowsのシャドウコピー機能を利用すれば、システムが自動的に保存した過去のバージョンに戻すことができます。
手順
-
上書きされたエクセルファイルがあったフォルダを右クリックし、「プロパティ」を選択。
-
「以前のバージョン」タブを開く。
-
復元したいバージョンを選び、「復元」をクリック。
第5章:エクセルの一時ファイルを利用した復元
エクセルは作業中に自動的に一時ファイルを作成します。これらのファイルは、エクセルが異常終了した場合や保存前にクラッシュした場合に、データを復旧する手助けになります。
本章では、一時ファイルを活用して失われたデータを復元する方法を詳しく解説します。
一時ファイルとは?
エクセルが作成する一時ファイルの種類
エクセルが動作中に作成する一時ファイルには、主に以下の3種類があります。
-
.tmp ファイル:エクセルの作業データを一時的に保存するためのファイル。
-
.asd ファイル(自動回復用ファイル):エクセルがクラッシュした場合に復元用として作成。
-
.bak ファイル(バックアップファイル):特定の設定が有効な場合に作成されるバックアップ用ファイル。
これらのファイルは、適切な場所に保存されていれば復旧が可能です。
一時ファイルの保存場所
一時ファイルは、以下のフォルダに保存されることが多いです。
-
Windows:
C:\Users\[ユーザー]\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles
-
Mac:
~/Library/Application Support/Microsoft/Office/UnsavedFiles/
このフォルダ内に保存されている一時ファイルを探すことで、復旧の可能性があります。
一時ファイルを使って復元する方法
方法1:エクセルの「未保存のブックの回復」機能を使用する
エクセルが異常終了した場合、未保存のブックを回復するためのオプションが提供されることがあります。
手順
-
Excelを開く。
-
「ファイル」→「情報」をクリック。
-
「ブックの管理」を選択し、「保存されていないブックの回復」をクリック。
-
未保存のファイル一覧から、目的のファイルを開く。
-
「名前を付けて保存」を実行し、データを確実に保存する。
この方法が最も簡単で、エクセルのクラッシュ後に復元できる可能性が高いです。
方法2:エクスプローラーで一時ファイルを手動で探す
エクセルの一時ファイルは手動で探すこともできます。
手順(Windows)
-
エクスプローラーを開く。
-
次のフォルダを開く:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles
-
「.asd」または「.tmp」ファイルを探す。
-
ファイルをエクセルで開き、「名前を付けて保存」を実行。
手順(Mac)
-
Finderを開く。
-
「移動」→「フォルダへ移動」を選択。
-
次のフォルダを開く:
~/Library/Application Support/Microsoft/Office/UnsavedFiles/
-
保存されているファイルを探し、エクセルで開く。
方法3:コマンドプロンプトを使った検索
Windowsのコマンドプロンプトを使用して、一時ファイルを効率的に検索することも可能です。
手順
-
Windowsキー + R を押し、「cmd」と入力してEnter。
-
次のコマンドを入力:
dir /s /a *.asd
-
見つかったファイルのパスを確認し、エクセルで開く。
第6章:クラウドストレージを活用した復元
近年、多くの企業や個人ユーザーがクラウドストレージを活用しています。OneDriveやGoogleDrive、Dropbox、iCloudなどのクラウドサービスには、ファイルのバージョン管理やごみ箱機能があり、削除したエクセルファイルや誤って上書きしたファイルを復元できる可能性があります。
本章では、クラウドストレージを利用したエクセルファイルの復元方法について詳しく解説します。
OneDriveでのエクセルファイル復元
OneDriveはMicrosoftのクラウドストレージサービスであり、エクセルファイルの保存やバージョン管理が可能です。特に、Office 365との統合が進んでいるため、自動保存機能を利用してエクセルデータを守ることができます。
OneDriveの「バージョン履歴」機能を使った復元
OneDriveでは、過去のバージョンのファイルを閲覧・復元できます。
手順
- OneDriveのウェブサイト( https://onedrive.live.com/)
-
復元したいエクセルファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」を選択。
-
過去のバージョンを一覧から確認し、復元したいものを選択。
-
「復元」ボタンをクリック。
この機能を利用すると、誤って上書きしたエクセルファイルを以前の状態に戻すことができます。
OneDriveのゴミ箱から削除したファイルを復元
OneDriveには「ごみ箱」機能があり、削除したファイルは一定期間保存されます。
手順
-
OneDriveのウェブサイトにアクセス。
-
左側のメニューから「ごみ箱」を選択。
-
削除したエクセルファイルを探し、選択。
-
「復元」ボタンをクリック。
OneDriveでは、削除から30日間は復元が可能です。ただし、組織アカウントでは管理者が設定を変更している可能性があるため、確認が必要です。
Google Driveの復元機能
Google Driveも、エクセルファイルのバージョン管理やごみ箱機能を備えており、削除や上書きをしたデータの復旧が可能です。
Google Driveの「バージョン管理」を利用した復元
Google Driveでは、特定のファイルの過去のバージョンを保持し、復元することができます。
手順
-
Google Driveのウェブサイト(https://drive.google.com/)にアクセス。
-
復元したいエクセルファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」→「バージョン管理」を選択。
-
過去のバージョンを確認し、適切なものを選択してダウンロード。
この方法を使えば、誤って上書きしたファイルを以前の状態に戻すことが可能です。
Google Driveのごみ箱から削除したファイルを復元
Google Driveの「ごみ箱」に移動したファイルは、30日間保存されます。
手順
-
Google Driveを開く。
-
左側のメニューから「ごみ箱」を選択。
-
削除したエクセルファイルを右クリックし、「復元」を選択。
30日を過ぎるとファイルは完全削除されるため、早めの対応が必要です。
Dropbox・iCloudのバックアップ機能
Dropboxの「ファイルの履歴」から復元
Dropboxでは、一定期間内であれば過去のファイルバージョンを確認し、復元できます。
手順
- Dropboxのウェブサイト(https://www.dropbox.com/)にログイン。
-
復元したいエクセルファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」を選択。
-
必要なバージョンを開き、「復元」をクリック。
Dropboxの基本プランでは30日間のバージョン履歴が保存され、Dropbox PlusやProfessionalプランでは180日間保存されます。
iCloud Driveの「最近削除した項目」から復元
Macユーザー向けのiCloud Driveでは、「最近削除した項目」フォルダを利用して削除したファイルを復元できます。
手順
-
iCloud Driveのウェブサイト(https://www.icloud.com/)にアクセス。
-
「最近削除した項目」を開く。
-
復元したいエクセルファイルを選択し、「復元」ボタンをクリック。
iCloud Driveでは、削除されたファイルは通常30日間保存されます。
第7章:データ復旧ソフトを活用する方法
エクセルファイルが削除されてしまったり、上書きされてしまった場合でも、データ復旧ソフトを使用することで高確率でファイルを取り戻すことができます。
本章では、無料および有料のデータ復旧ソフトの紹介と、それらを使った復元手順について詳しく解説します。
無料で使えるデータ復旧ソフト
無料のデータ復旧ソフトを活用すれば、コストをかけずに削除されたエクセルファイルを復元できる可能性があります。以下に、代表的なソフトを紹介します。
Recuva
Recuvaは、Windows用の無料データ復旧ソフトで、削除されたエクセルファイルをスキャンし、復元できる可能性があります。
手順
-
Recuvaを公式サイト(https://www.ccleaner.com/recuva)からダウンロードしてインストール。
-
ソフトを起動し、「ドキュメント」を選択。
-
復元したいファイルがあったフォルダを指定し、スキャンを開始。
-
検出されたファイルの中からエクセルファイルを選択し、「復元」をクリック。
EaseUS Data Recovery Wizard Free
EaseUSは、直感的なインターフェースを持つ強力なデータ復旧ソフトです。
手順
-
EaseUS公式サイト(https://www.easeus.com/)からダウンロード。
-
ソフトを起動し、復元したいドライブを選択。
-
「スキャン」を実行し、削除されたエクセルファイルを検索。
-
必要なファイルを選択し、「復元」をクリック。
TestDisk
TestDiskは、パーティションの修復やデータ復旧に特化したオープンソースソフトです。
手順
-
TestDiskをダウンロードし、インストール。
-
コマンドラインでTestDiskを実行し、対象のドライブをスキャン。
-
削除されたエクセルファイルをリストから選択し、復元を実行。
有料のデータ復旧ソフトの紹介
無料のソフトでは復旧できない場合、有料のデータ復旧ソフトを活用することで、より高い成功率でデータを取り戻せる可能性があります。
Wondershare Recoverit
Wondershare Recoveritは、高い復元率を誇るデータ復旧ソフトです。
手順
-
Recoveritを公式サイト(https://recoverit.wondershare.jp/)からダウンロード。
-
ソフトを起動し、スキャン対象のフォルダを選択。
-
「スキャン」ボタンを押して、復旧可能なエクセルファイルを検索。
-
必要なファイルを選択し、「復元」をクリック。
Stellar Data Recovery
Stellar Data Recoveryは、削除されたエクセルファイルの復元に特化した有料ツールです。
手順
-
Stellar Data Recoveryの公式サイトからソフトをダウンロード。
-
ソフトを起動し、復元対象のドライブを選択。
-
クイックスキャンまたはディープスキャンを実行。
-
復元可能なファイルを選択し、「復元」ボタンを押す。
Disk Drill
Disk Drillは、MacおよびWindowsで使えるデータ復旧ソフトです。
手順
-
Disk Drillを公式サイト(https://www.cleverfiles.com/)からダウンロード。
-
ソフトを起動し、削除されたエクセルファイルがあるドライブを選択。
-
「スキャン」を実行し、復元可能なファイルを確認。
-
必要なファイルを選択して「復元」をクリック。
データ復旧ソフトの使い方と注意点
データ復旧の成功率を上げるコツ
データ復旧ソフトを使用する際には、以下のポイントに注意すると成功率が向上します。
-
削除後、できるだけ早くスキャンを実施する
-
時間が経つと、新しいデータが上書きされ、復旧が困難になる。
-
-
復元したいファイルの保存先を変更する
-
復旧したファイルを同じドライブに保存すると、さらなるデータ破損の原因になる。
-
-
ディープスキャンを試す
-
クイックスキャンで見つからない場合、ディープスキャンを実行することで復元できる可能性が高まる。
-
データ復旧ソフトを使用する際のリスク
データ復旧ソフトを使用する際には、以下の点に注意が必要です。
-
信頼できるソフトを使用する
-
無料ソフトの中には悪質なものもあるため、公式サイトからダウンロードする。
-
-
過度なスキャンを繰り返さない
-
繰り返しスキャンを行うと、ディスクに負荷がかかり、物理的な損傷を引き起こす可能性がある。
-
-
復旧後は必ずバックアップを取る
-
復元したファイルが完全であるかを確認し、すぐに別のストレージにバックアップを保存する。
-
第8章:エクセルのバージョン別の復元方法
エクセルのバージョンによって、利用できる復元方法や機能に違いがあります。
本章では、Excel 365、Excel 2019/2016/2013、およびExcel 2010/2007/2003の各バージョンにおけるファイル復元方法を詳しく解説します。
Excel 365の場合
Excel 365はクラウドとの連携が強化されており、OneDriveやSharePointを利用してデータを自動的に保存・復元できる機能が備わっています。
クラウド連携を活用した復元
Excel 365では、自動保存機能(AutoSave)が有効になっている場合、変更はリアルタイムでOneDriveに保存されます。このため、誤ってファイルを閉じても、過去のバージョンを復元できます。
手順
-
Excel 365を開く。
-
「ファイル」→「情報」をクリック。
-
「バージョン履歴」を選択。
-
復元したいバージョンを開き、「復元」をクリック。
「ドキュメントの回復」機能の使い方
Excel 365がクラッシュした場合、再起動時に「ドキュメントの回復」ウィンドウが表示されます。
手順
-
Excelを再起動。
-
「ドキュメントの回復」ウィンドウで、一覧から目的のファイルを選択。
-
ファイルを開いた後、「名前を付けて保存」で復元。
Excel 2019/2016/2013の場合
これらのバージョンでは、クラウド保存とローカル保存の両方の復元方法が用意されています。
バージョン履歴を利用する方法
OneDriveやSharePointを使用している場合、バージョン履歴を活用してデータを復元できます。
手順
-
OneDriveのウェブサイトにアクセス。
-
復元したいExcelファイルを右クリック。
-
「バージョン履歴」を選択し、適切なバージョンを開く。
-
「復元」ボタンをクリック。
自動回復ファイルを利用した復元
Excel 2019/2016/2013では、自動回復(AutoRecover)機能を使って、クラッシュしたファイルを復元できます。
手順
-
Excelを開く。
-
「ファイル」→「情報」→「ブックの管理」をクリック。
-
「保存されていないブックの回復」を選択。
-
一覧から目的のファイルを開き、「名前を付けて保存」。
Excel 2010/2007/2003の場合
古いバージョンのExcelでは、最新のバージョンに比べて復元機能が限られています。しかし、「ファイルの回復」機能や「一時ファイル」を利用して復元する方法があります。
「ファイルの回復」機能の使い方(Excel 2010/2007)
Excel 2010および2007には、自動回復機能が備わっています。
手順
-
Excelを開く。
-
「ファイル」→「最近使用したファイル」を選択。
-
「未保存のブックの回復」をクリック。
-
未保存のファイルを開き、「名前を付けて保存」。
古いExcelでの復元手順(Excel 2003以前)
Excel 2003以前のバージョンでは、最新の復元機能が使えません。しかし、次の方法で復元を試みることができます。
手順
-
「ツール」→「オプション」→「保存」を開く。
-
「自動回復ファイルの場所」を確認。
-
エクスプローラーを開き、そのフォルダにアクセス。
-
「.xlk」や「.tmp」ファイルを探し、開いて復元。
第9章:トラブルシューティングと復旧のための予防策
エクセルファイルの消失は予期せぬトラブルとして発生することがあります。しかし、適切なトラブルシューティングの方法を知っておくことで、迅速に復元できる可能性が高まります。
本章では、よくある問題とその解決策、そして将来的なデータ損失を防ぐための予防策について詳しく解説します。
よくあるトラブルと対処法
トラブル1:自動保存が動作しない
エクセルの自動保存(AutoSave)機能が動作しない場合、以下の点を確認してください。
解決策
-
「ファイル」→「オプション」→「保存」を開く。
-
「自動回復を有効にする」および「AutoSaveを既定でオンにする」がチェックされていることを確認。
-
OneDriveを使用している場合、クラウドとの同期が適切に動作しているか確認。
-
エクセルが管理者権限で実行されていないか確認(管理者権限で開くとAutoSaveが無効化されることがある)。
トラブル2:「未保存のブックの回復」が表示されない
エクセルがクラッシュした後、「未保存のブックの回復」オプションが表示されない場合、手動で回復ファイルを探す必要があります。
解決策
-
エクスプローラーを開き、以下のパスを入力:
C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles
-
「.asd」または「.tmp」ファイルを探す。
-
ファイルを開き、「名前を付けて保存」を実行。
トラブル3:バージョン履歴が残らない
OneDriveやGoogle Driveを利用している場合でも、バージョン履歴が残らないことがあります。
解決策
-
OneDriveまたはGoogle Driveの「設定」→「バージョン管理」を確認。
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クラウドストレージの空き容量をチェック(容量不足の場合、古いバージョンが削除される可能性がある)。
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ファイルの共有設定を変更し、編集権限を持つユーザーを限定。
エクセルデータ消失を防ぐための習慣
データ消失のリスクを最小限に抑えるために、日常的に以下の習慣を取り入れることをおすすめします。
定期的に手動保存する
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作業の節目ごとに 「Ctrl + S」 で手動保存を実行。
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「名前を付けて保存」 を使い、定期的に異なるバージョンを保存。
クラウドストレージにバックアップを取る
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OneDriveやGoogle Driveを利用し、自動保存を有効にする。
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Dropboxの「ファイル履歴」機能を活用。
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クラウド上に保存する際は、共有フォルダの権限設定を適切に行う。
重要ファイルを別のフォルダにコピーしておく
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USBメモリや外付けHDDに定期的にバックアップ。
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Windowsの「ファイル履歴」機能を有効化し、自動バックアップを取る。
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定期的にExcelファイルを別フォルダに手動でコピーし、保険をかける。
システムトラブルによるデータ損失を防ぐ方法
エクセルファイルの消失は、ソフトウェアの問題だけでなく、システムトラブルによっても引き起こされることがあります。以下の対策を講じることで、システム障害によるデータ損失を防ぐことができます。
UPS(無停電電源装置)を使う
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停電時にPCが突然シャットダウンするのを防ぐ。
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UPSを導入することで、短時間の停電時でも安全に作業を続行可能。
ウイルス対策ソフトの導入
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マルウェアやランサムウェアからエクセルファイルを守る。
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定期的にウイルススキャンを実行し、不審なソフトウェアを削除。
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信頼できないウェブサイトからのファイルダウンロードを避ける。
SSD・HDDの健康状態を定期的にチェック
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「CrystalDiskInfo」 などのツールを利用して、HDDやSSDの状態を監視。
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異常を検知した場合は、速やかにデータをバックアップ。
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長期間使用したストレージは、新しいものに交換することを検討。
第9章まとめ
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エクセルファイルの消失は様々な原因で起こるが、多くの場合復元可能。
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まずはエクセルの自動保存機能や「未保存のブックの回復」を試す。
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ごみ箱や「以前のバージョン」を活用すれば簡単に復元できる。
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クラウドストレージやデータ復旧ソフトを活用すれば復元率が上がる。
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定期的なバックアップとトラブル予防策を講じてデータ消失を防ぐ。
第10章:まとめ
本ガイドでは、エクセルファイルを復元するための多様な方法を紹介しました。
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まず試すべき手順
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「未保存のブックの回復」機能をチェック。
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「ドキュメントの回復」画面で復元可能か確認。
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ごみ箱やクラウドストレージのゴミ箱を確認。
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「バージョン履歴」機能で以前の状態に戻す。
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高度な復元方法
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一時ファイル(.tmp, .asd)を探す。
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データ復旧ソフト(Recuva, EaseUS, Stellar)を使用する。
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クラウドストレージ(OneDrive, Google Drive, Dropbox)の履歴を活用。
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予防策としてのベストプラクティス
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定期的にバックアップを取る(クラウド or 外部ストレージ)。
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ファイル履歴やバージョン管理を有効にする。
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エクセルの自動保存機能(AutoSave)を適切に設定。
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UPS(無停電電源装置)を活用し、システム障害に備える。
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本ガイドがエクセルファイルの復元に役立つことを願っています。定期的なバックアップと適切な復元手順を習慣化することで、データ損失のリスクを最小限に抑えることができます。